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上場企業から中小企業になる話

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『SEOマーケティングの未来を読む vol.131』
「上場企業から中小企業になる話」

【1】 東村アキコ先生と巨匠浦沢先生の漫勉

人気の東村アキコ先生と巨匠浦沢先生の漫勉。

ちょうど前にNHKでやってて偶然見てすごいなと思ってたら、別のところででも話題になってました。

東村さん「かくかくしかじか」とか読みましたが絵もそうですけど、すごく人間らしい部分とかいっぱいあって共感できるし笑える漫画だったような、最後はほんとに悲しくなりましたけど。

東村アキコ | 浦沢直樹の漫勉 | NHK

この中で興味深い言葉が締切の話。

「デビューして三十何年になりますけど、ずっと締め切りのない日はない。」

「デビュー以来、いついつまでに何を仕上げるっていう生活しか経験してないので、ちょっと想像つかないよね。」

あれやらんとあかん、これやらんとあかん、と日々追われることが振り返れば充実ということでしょうか。

確かに「小人閑居をして不善をなす」、暇な人は悪さする。

立派な成果を出し、業界でも一般人にも知られているような素晴らしい人がいう言葉はいつも深く、本質論で染みます。

【2】 WEBマーケティング4コマ漫画

■ 第168話 アイドマとアイサス
マーケティング用語の「アイドマ」「アイサス」この呪文のような言葉の意味は?
  
■ 第169話 ライターの力
ライターとは火をつける道具にあらず。人に影響を与えるクリエイティブなライターとは?
  

【3】上場企業から中小企業になる話

ネットで有名な企業ってどこですか?と学生さんに聞かれたことがありましが、即答で

「グーグル」「フェイスブック」「アップル」など思わず口にしてしまい、日本の企業さんをぱっと言わなかった自分を少し反省しています。ネット企業も多種多様ですが、今回はそのようなネット企業にも関連した話です。

明石家さんまやダウンタウンなど多くの人気芸人を輩出してきた吉本興業さん。「よしもと」という通称でおなじみですよね。
吉本興業はテレビ・ラジオ番組の製作、マネジメントやプロモーター、劇場、芸人養成スクール等を手がける大手タレント事務所で、その所属タレントの数は約6000名。
特にお笑い芸人のマネジメントで圧倒的な強さを誇り「お笑いの総合商社」「日本最大の芸能プロ」とまで言われるお笑い界・演芸界の名門です。吉本興業が主催する「M-1グランプリ」で多くの若手お笑い芸人がしのぎを削り、お笑いブームと言われた時期もありました。

その資本金約125億円の上場企業であった吉本興業が、前にその資本金を1億円に減資すると発表し、話題になりました。
その本当の理由は、中小企業となって法人税率の軽減といった税制上での優遇を受けるためだと言われています。
こうした大企業の動きから、政府は中小企業の定義や税制まで見直す方針だそうです。

今回のメルマガは、中小企業の税制上のメリットや、政府の対応について取り上げてみたいと思います。

資本金1億円に減資すると発表した「よしもと」の不思議

吉本興業が事業の元手となる資本金を約125億円から1億円に減資すると発表しました。

・3月末時点で利益剰余金が140億円のマイナス
・約124億円は資本準備金に回し財務の改善を図る
・すでに6月の株主総会で承認されており9月1日付で実施する

とのことです。

「総合的な財務戦略を勘案した」
「取り崩した資本金を中長期的な投資に回すための財務戦略」

と吉本興業の広報は語っています。

しかし、資本金を125分の1である1億円にする理由は、本当にそれだけだったのでしょうか?

法で定められる「大企業」と「中小企業」

そもそも「大企業」と「中小企業」はどうやって分けているのでしょうか。知名度でしょうか。

人気があって学生が就職したがる企業でしょうか。

大企業か中小企業かは、そうしたネームバリューやブランドではなく「法人税法」「中小企業基本法」「会社法」という法によって定められています。

「法人税法」では、資本金1億円以下で大規模法人に支配されていない法人を、中小企業としています。
「中小企業基本法」では、業種によって中小企業の定義が異なり、製造業では資本金3億円以下又は従業員300名以下を、小売業では資本金5千万円以下又は従業員50人以下を、中小企業としています。
中小企業の動向等を国会に報告する目的で中小企業庁が毎年発行している「中小企業白書」もこれがもとになっています。
中小企業基本法では日本の99.7%が中小企業であり、雇用も約7割(約2800万人)を占めているそうです。

「会社法」では、資本金5億円以上、又は負債200億円以上を大会社としており、大会社以外の会社は中小企業と考えることができます。
このように、法によって中小企業の定義は異なります。

中小企業と「法人税法」

企業にとって最も重要なのは、税金の話に関わる「法人税法」でしょう。
法人税法では資本金1億円以下は中小企業とみなされる事は先ほど説明した通りですが、重要なのはそこではありません。
法人税法では「中小企業は法人税などの負担が軽減される」とされているのです。

吉本興業の広報は「税制優遇が一番の目的ではない」としていますが、吉本興業が資本金を約125億円から1億円と125分の1に減資した本当の狙いは、中小企業とみなされることで税の負担を軽くするためだと言われています。

「大企業」という名より「節税」という実を取った、ある意味大阪らしく吉本らしい企業戦略なのかもしれません。

中小企業とさまざまな優遇措置

中小企業には大企業のような強い経営体力はありません。
そのため先ほど説明した通り、中小企業は大企業より法人税の税率が低くなっています。
もう少し詳しく説明すると、大企業なら所得金額の23.9%です。

一方、資本金1億円以下の中小企業の場合、年800万円以下の所得金額なら15%となっています。
これは2015年3月31日までという期限付きだったのですが、2017年3月31日まで延長となりました。
また大企業は法人住民税の負担も中小企業と比べて重く、地方特別法人税も課せられます。

中小企業は他にも多くの優遇措置を受けることができます。
「外形標準課税の免除」
「少額減価償却資産の特例」
「欠損金の繰越控除」
「欠損金の繰戻還付」
「交際費課税の特例」

などです。

それぞれ説明していきます。

「外形標準課税の免除」

資本金や売上高、事業所の床面積や従業員数などから企業の事業規模を割り出し、その規模に応じて黒字だろうが赤字だろうが関係なく課税される税が「外形標準課税」です。
現在「外形標準課税」は資本金が1億円を超える大企業だけを対象にしているので、中小企業は払わなくて済んでいます。

「少額減価償却資産の特例」

中小企業は年間300万円に達するまで1個あたり30万円未満の消耗品なら資産ではなく費用として計上できます。

「欠損金の繰越控除」

前期以前に生じた赤字を翌期以降に繰り越して所得から控除する場合、大企業では全額控除することはできず、必ず一部課税されます。しかし、中小企業は全額控除できます。

「欠損金の繰戻還付」

経営が悪化し、前期は黒字だったのに当期は赤字になった場合、中小企業は前期に納税した法人税の還付を受けることができます。

「交際費課税の特例」

基本的に法人税で交際費の損金は認められませんが、中小企業では年間800万円までの交際費が認められ、飲み食いしたお金を経費として落とすことができます。

「中小企業投資促進税制」

簡単にいえば、中小企業では一定の設備投資を行った際に税金が安くできる可能性があります。

資本金を1億円以下にしようと試みたシャープ

このように、中小企業には様々な面で優遇されているのです。
「資本金を1億円以下にして中小企業となり税制面で優遇してもらう」
という奇策を講じようとしたのは、実は吉本興業だけではありません。

2015年5月に家電大手で経営再建中のシャープが1200億円以上ある資本金を1億円に減資し、剰余金にまわすことで累積損失の穴埋めをする方針を発表しました。

1200分の1ですから、吉本興業以上の凄まじい減資ですね。しかし、このシャープの試みは吉本興業と違ってうまく行きませんでした。

政府の反対で資本金1億円の減資を断念したシャープ

資本金が1億円以下になれば、シャープですら税法上では「中小企業」となり、税制面で優遇されることになります。

しかしこのシャープのなりふり構わない試みは、各方面を衝撃ニュースとして駆け巡り、東京株式市場ではシャープの株価が一時ストップ安まで急落し、政府などから批判の声が噴出しました。

宮沢洋一経済産業相は記者会見で

「若干、企業再生としては違和感がある」

と発言しています。

連結売上高3兆円、従業員5万人規模のシャープという大企業が中小企業扱いされることになるのですから、この違和感は当然でしょう。

結局、この1200億円以上ある資本金を1億円以下にする計画をシャープは断念し、大企業とみなされる5億円まで減らすに留まり、今までどおり大企業として扱われ中小企業に対する優遇は受けられませんでした。

この結果に対し、菅義偉官房長官は、

「常識的に1億円というのは国民に違和感があったのではないか」

と語っています。

疑問視される「資本金1億円以下は中小企業」という基準

経営再建中のシャープのように、事業規模が大きいにも関わらず、税制優遇を受けるために資本金を1億円以下に抑えようとする企業や、年間売上高が1千億円以上あるにも関わらず資本金が1億円以下のため税制優遇を受けている企業の存在を問題視する人もいます。

資本金1億円以下の有名企業には「日本マクドナルド」
「セガホールディングス」「ヨドバシカメラ」
「ジャパネットたかた」「アイリスオーヤマ」
「東急百貨店」などがあります。

「中小企業の税制優遇基準」の見直しを検討する政府

日本経済新聞によると、政府がこれらの優遇基準の見直しの検討を本格的に進め、早ければ2017年度にも変更するそうです。

中小企業の優遇措置は日本経済の成長のために必要なものなのでしょうが、資本金1億円という基準だけを中小企業か大企業かのモノサシに使うことには無理が出てきたために、企業の事業活動の規模をもっと適切に表すことのできる基準が求められているようです。

そのため資本金に比べて操作しにくい売上高や所得を新たな指標にする案などがでているようです。
また、外形標準課税を資本金が1億円以下の中小企業にも課す案が検討されているそうで、日本商工会議所が反対しています。

政府のこうした動きが活発になったきっかけはシャープの減資騒動だとして、余計なことをしてくれたなとシャープを恨む声まであるそうです。

まとめ

本当に優遇措置が必要な中小企業もあれば、それを逆手にとって活用しようとする大企業もある、ということですね。

企業が節税しようとするのは当然ですから、一概にそれを悪いこととは言いませんし思ってもいませんが、しかしこうした大企業の動きのために中小企業への優遇措置の見直しが検討されているのだとしたら、
「大企業のことだから、自社には関係ないや」
と、大企業ではない企業も無関心でいることはできなくなりますね。

ネットの会社さんで言えば楽天、GMO、サイバーエージェントなど有名な会社さんがありますが、GMOの熊谷社長が言ってました。

「海外比較で見た場合やはり税制が足を引っ張っている部分はあります。単純比較でグーグルやアップルなどが得た利益と税金の割合を見た場合と、日本の国内企業が支払う税金の割合を比べると明らかに違いがある」

「私どもはどんどん税金が非常に高い状況で勝負しなきゃいけないってことは、年単位でみると再投資できるのが、競争相手よりも何分の1なんですよ。たぶん4倍ぐらい違うんですよね、実効税率が。ということは、AmazonさんとかAppleさんの4倍稼がないと手残りが同じにならないという状況に今あるわけですよね。」

引用元

偉そうなこと書きましたが、隣の芝は青いやらの話を何となくしてみました今回の内容。

クレアネットは大企業でも何でもありません。
今日もできる場所でできることをコツコツと自分の持ち場をしっかり意識して頑張ります。

(記載 谷 美輝)

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