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RIZAPをビジネスモデルの観点から見てみたら

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『SEOマーケティングの未来を読む vol.125』
RIZAPをビジネスモデルの観点から見てみたら

【1】 役作りのために

最近会う人に「太ったね!」と言われたり「痩せたね!」と言われたりするのですが、どっちが正しいのか?

全く人の話はあてにならないので、どっちを信用していいのかわからなくなりますが、実際には(多少)太ってます。

どうして太っているのか?

不摂生もあるのですが、運動不足や代謝が下がっている原因もありますし、まあ理由などだいたいわかっているものです。

そうなると、「太ったね?」と言われた際に答える言葉が大事になるのですが、そういう際には答えは「役作りのために」です。

社長らしく多少の威厳を持たせようと思い、多少体重を増やしてみようかな、という理由です。

役作りです、役作り。うん、役作り。

引き続きどうぞよろしくお願いします。

【2】 WEBマーケティング4コマ漫画

■ 第154話
ハッピートライアングル
お客様、パートナー様、スタッフ、みんながハッピー。それを聞いた呉くんは…?

■ 第155話
ネット通販1兆円超え
通販の常識を変えたアマゾンのすごさについて語る呉くんと轟部長。
そのすごさを支えているのは…?

【3】RIZAPをビジネスモデルの観点から見てみたら

♪ブーチッブー・ブーッチブー♪という重苦しいBGMの中で、虚ろな目で肩を落とし、みっともなく突き出た腹を晒しながら佇んでいる中年男女。

しかし一転♪チャーッチャッチャッチャーチャー♪とBGMが軽快なものに変わるやいなや、その中年たちが、晴れやかな表情をして胸を張り、スマートで引き締まったモデルのような肉体になっている。

そして流れる「結果にコミットする。」というキャッチコピー。

きっとあなたも見たことがあるでしょう、肉体改造に成功した人たちのビフォーアフターを描いた「RIZAP」という完全個室のプライベートジムのCMです。

ただ痩せるだけでなく、自分の思い描く引き締まった理想の肉体になれるのではという期待を抱かせてくれる上に、こうした斬新なビフォーアフターの演出が受け、ダイエットや筋トレに興味のある人達は言うに及ばず、興味のない人々の間でも関心を集めています。

こんなものを見せられたら、たいていの腹が出てきた中年は気になりますよね。

「浪速のロッキー」の異名で知られた元ボクサーで俳優の赤井英和さんも、たった2か月で体重77.1キロから70.1キロに、ウエスト100センチから84.5センチに、体脂肪率20.8%から13.2%と目覚ましい変化を遂げ、CMに出演していました。

50代なかばでこの変化はすごいですよね。

最近では、SMAPの香取慎吾さんが飲み会で肉体美をそれとなく自慢するというコミカルな内容のCMも流れています。

今回のメルマガでは、このRIZAPをビジネスモデルという視点から調べ、感想を述べてみたいと思います。

■RIZAPのCMの印象

RIZAPのCMを見てまず感じるのは、他のよくあるダイエットのCMとは違って、商品やサービスの良さをダラダラとアピールせずに、ビフォーとアフターの劇的な表情と体型の変化をインパクトのある方法で見せつけることで説得力を増しているということです。

あんなにカッコいい体型に本当に変われるなら、自信満々になれるなら、RIZAPをやってみたい、話くらいは聞いてみたいと、十分に感じさせてくれます。

そしてもう一つは、

「結果にコミットする。」

というシンプルなキャッチコピーです。

Commitとは約束するという意味ですから、「トレーニングの結果については約束しますよ」くらいの意味でしょうか。

単に「結果を約束しますよ」ではなく、聞きなれない「コミット」という単語を使うことで、より記憶に残るキャッチコピーにしたいという狙いがあるのでしょう。

■ダイエットやフィットネス業界の話

日本のダイエットや健康関連市場は約2兆円と言われる巨大市場です。

日本の民間フィットネスクラブに限れば、その市場規模は4000億円強、会員数はのべ400万人程度とされています。

健康志向の高まりと中高年の世代が増えていることで施設数が増えているようです。

フィットネスクラブやスポーツジムは、トレーナーは若手が多いため人件費は他事業と比べて低めですが、設備投資に莫大な費用がかかります。

フィットネスルームやトレーニングルーム、トレーニングマシン、プ-ル、風呂、サウナが必要で、この最初の設備投資には約10億円もかかると言われています。

また、プ-ルや風呂といった水回りに関する維持コストが極めて大きいそうです。

最近ではこうした巨大な固定費を避けるため、人口が多い都市圏ではなく土地代の安い郊外にプールや風呂やシャワーのない女性専用の小規模フィットネスが作られるようになっており、順調に業績を伸ばしているそうです。

こうしたフィットネスクラブは「カーブス」と呼ばれています。

■フィットネスクラブと会員数

通常のフィットネスクラブやスポーツジムの経営で何よりも大事なのは、会員数を維持・拡大することです。

人が多ければ多いほど会費収入を確保できますし、広告や物販による収入も期待できますからね。

しかし、フィットネスクラブやスポーツジムが受け入れられる人数には限りがあります。

会員数が増えても、施設のキャパシティを超えてしまえば、トレーニングマシンやロッカーに行列ができ、せっかく集めた会員も我慢できずに辞めてしまうでしょう。

セントラルスポーツやルネサンスといった上場フィットネスクラブ大手2社は、会員費を下げる価格競争と、出店を積極的に行うことで、これらを実現させようとしてきました。

ここで見逃せないのは「幽霊会員」の存在です。

一念発起し会員になったものの、あまり通うことも出来ずにダラダラと会費だけは払い続けている。

こうした人間はフィットネスクラブやスポーツジムから見ればとてもありがたい存在であり、そうした幽霊会員のお陰で経営が成り立っているケースもあるそうです。

■RIZAPと他のフィットネスクラブとの違い

RIZAPの一般的なコースでは、50分のトレーニングを週2回行うそうです。

あれだけ体型が変わるのだから、もっと長時間、頻繁にトレーニングしていそうなものなのに、ちょっと意外ですよね。

しかし、その50分のトレーニングは非常にハードで、翌日体が動かなくなるくらい、重い負荷をかけて全身を筋力トレーニングするそうです。

また、週2回のトレーニング以外にも、糖質制限などの徹底的な食事管理が行われるそうです。

一人では挫けてしまいそうなこのハードなトレーニングと食事制限を、厳しいトレーナーがマンツーマンで徹底的に支えていく、というのがRIZAPのやり方です。

RIZAPを運営する健康コーポレーションの瀬戸健社長はこう語っています。

「幽霊会員を出さない。そこを担当するトレーナーには厳しく言っている」

通常のフィットネスクラブやスポーツジムのビジネスモデルにおいて重要なのは、会員数や施設の
充実度・満足度なのかもしれませんが、RIZAPでは会員のモチベーションの維持がなにより大切で、そのためにトレーナーが大きなウエイトを占めているようです。

■水回りを排除するRIZAPのコスト削減

意外なのは、RIZAPでは筋力トレーニングがメインであり、ウォーキングマシンやプールがまったくないことです。

ダイエットといえば誰でも思い浮かべるのはランニングや水泳ですが、こうした有酸素運動のメニューはまったく用意されていないそうです。

また、RIZAPは施設も高級なイメージですが、お風呂やサウナなどもなく、シャワー室のみしかないそうです。

「ターゲット層の会員の方は、自分には有酸素運動は継続できない、と思っている方が多い」

「ダイエットを継続してもらうことを最優先に考えてメニューを組むと筋力アップと食事管理になる」

と、RIZAPを運営する健康コーポレーションの瀬戸健社長は語っています。

それもあるのでしょうが、プールやサウナといった水回りにかかる維持コストを避けたかったのも理由の一つだと思います。

■RIZAPとダイレクトマーケティング

通常のスポーツジムやフィットネスクラブの場合、10000円程度の入会金と月10000円程度の会費で、不特定多数の人を集め、できるだけ長く通ってもらうことで利益を出そうとします。

それに対しRIZAPの料金は、通常コースで入会金50000円、2ヶ月間通って約300000円と、2ヶ月で35万円かかる、驚くような高額料金です。

ダイエットや筋トレにここまでお金を出せる人は、自分を変えたいと本気で思っている人か、お金に余裕のある人だけでしょう。

RIZAPの高額料金は、そうでない人をふるい落とす役割も果たしています。

ダイレクトマーケティングという言葉があります。

慎重に選んだターゲットから反応を引き出し、人間関係を構築していくマーケティングの手法です。

会費を安くし、幅広く多くの人を集めたいと思っている通常のスポーツジムやフィットネスクラブがやっているのがよくあるマスマーケティングだとしたら、高額料金を払ってでも入会したいと願うターゲットだけを見つけようとしているRIZAPのそれは、ダイレクトマーケティングと呼べるかもしれません。

■RIZAPの多角経営

「痩せたいなあ。もっと他にお金がかからなくて楽なダイエットないかなぁ」

とポテトチップスを食べながら言っているような人間は、最初からRIZAPのマーケティングから切り捨てられている……のかと思えば、実はそうでもないようです。

「RIZAPスタイルプログラム」という、RIZAPのトレーナーが食生活の改善などを解説しているDVDが1ヶ月約5万で提供されています。

他にも「RIZAP グローバルエクサ 特別セット」と呼ばれるEMSベルトも販売されています。

EMS(Electrical Muscle Stimulation)とは電気刺激によって筋肉を収縮させる運動器具のことで、体を動かさなくてもこのベルトを腹に巻いてスイッチを入れれば腹筋を筋力トレーニングしているのと同じ効果が得られますよ、という商品です。

RIZAPに興味はあるけど実際に通うだけの根性もお金もない、という人たちをターゲットにしているのかもしれません。

「ダイエット・筋力トレーニングのRIZAP」
「肉体改造のRIZAP」

と知名度を高め、ブランドを一度構築してしまえば、多くの人間にアプローチすることも容易になり、事業を多角化し、拡大することもできるというビジネスモデルの好例ではないでしょうか。

そういえば夢展望さんは、ライザップの健康コーポレーションさんの子会社になりましたね。

夢展望さんといえばレディースファッションの通販会社さん、ダイレクトマーケティングの強みを活かす、ということでしょうか。

■まとめ

RIZAPのCMからは、色々と考えさせられることがありました。

RIZAPは、フィットネスクラブやスポーツジムと競合することになり、既存の企業は危機感を抱いているのかもしれないと感じていましたが、そう単純なものでもないのかもしれません。

また、あらゆるビジネスに言えることかもしれませんが、従来のやり方や視点を少し変えるだけでも、まったく違ったビジネスモデルが生まれると感じました。

(記載 谷 美輝)

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