商人道と大阪産業創造館

南森町から北浜に抜けて堺筋本町に行く道は自転車で疾走するルートなんですが、いつも北浜の大阪証券取引所前には大きく五代友厚像があって、何か気合を注入されているような気がしながら自転車で走ってます。

「もっと頑張らんかい。経営よくせんかい」と言われているような。

これはある本で読んだ話ですが、2012年秋にタイで大洪水が起こり、日本電産のタイ工場も、たいへんな被害を受けたそうで、現地の工場はどこも操業停止に追い込まれ、従業員は自宅待機となっていたところ、永守さんは現地の工場長に命じて、従業員を全員出社させ、すぐに工場の復旧に取り掛からせたとそうです。
タイ工場はサプライチェーンの重要な部分を担っているため、ここが止まってしまうと他の工場すべてに影響が出るので会社の生産計画が大幅に狂ってしまう。

地元の従業員にしてみれば、洪水で家が浸水しているのに、工場で仕事などしていられるか、と思ったかもしれない。だが永守さんは、「工場の再開が遅れれば、それだけ多くの人に迷惑がかかる。タイの従業員も、工場が動かなければ、お金が入らない。なるべく休ませずに働かせてあげたほうが、すべての人にとってメリットがある」と判断したそうです。仕事があれば食べていくこともできる、仕事がないとお金も入らない。

経営は仕事を作ることでもあり、社会に貢献すること。何も仕事がないのは本当に悲しいことで、経営とは商人道をまっとうに進むことだと思います。
時代劇に出てくる商人には、相手お顔色をうかがいつつ裏で舌をだしたり、揉み手をして権力者にすり寄ったりするイメージがありますが、しかし真の日本の商人道は、もっと高潔で厳しいもののはず。時に無情とも思える判断を下さなければならない瞬間もある。経営者はつねに、社会全体の利益を考えて決断しなければならないからである。社員の反発を招くかもしれない。だが、それでも経営者には、自分が正しいを思う判断を貫き通す強さが要るはず。

大阪産業創造館に行く途中、いつもそんなことを考えます。学んでばっかりやなくて、経営をよくせんかい、五代友厚像が吠えているような。

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