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「発想の転換」と「意外性」。「オフィスグリコ」の販売戦略

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『SEOマーケティングの未来を読む vol.145』
「発想の転換」と「意外性」。「オフィスグリコ」の販売戦略

 

【1】    お菓子市場とかなんとか

暑い日が続きますね。

大阪は本日も昼は35度なのに、自転車で堺筋本町までさくっと移動。

本町の御堂筋線と重なる十字路にあるスタバがあるあたりが
大阪では最も暑いそうです。

・本町なので都心部である暑さ
・阪神高速があるのでその暑さ
・御堂筋線の車排気ガス
・ビルの跳ね返り熱
・アスファルトの熱

好条件が揃っているスポットだそうです。そんな本町スタバ前を自転車疾走したら、さすがにオープンカフェがらがら。

あまりの暑さに喜ばれているのがこのノベルティ「オリジナルうちわ」
https://www.facebook.com/clarenet.jpn
今年も企画して作成しました!

いつもご愛顧いただいているみなさま、暑い日に御入り用でしたらスタッフまでどうぞ。

そんな暑い日が続きますが、今回は涼しいオフィスでのマーケティングの話です。

 

【2】 WEBマーケティング4コマ漫画

第205話
回文ライティング
呉くんが轟部長へ言った回文とは?

第204話
返3秒アイキャッチ
呉くんが訴求力の重要性について考えております。

第203話
訴求力のあるアップの顔
商品広告の魅力を出す方法を呉くんが悩んでいるようです。

第202話
ペルソナ
サイト作成するにあたって、押さえておきたいペルソナってなに?

 

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【3】「発想の転換」と「意外性」。「オフィスグリコ」の販売戦略

「手軽な福利厚生」を謳い文句に職場に置かれたコンパクトなお菓子箱。中身は全部100円で、代金箱にお金を入れてお菓子を取り出す、皆さんの会社にもあるかもしれない「オフィスグリコ」の「リフレッシュボックス」。

長時間のデスクワークで頭が疲れた時、仕事が一段落した時、ちょっとストレスが溜まった時、残業で小腹が空いた時……栄養補給やリフレッシュのために、会社でもお菓子を食べたくなる人も多いかと思います。

そんな人達にこのオフィスグリコは好評のようです。

「オフィスにお菓子」

という斬新なアイディアをもとに、2002年の大阪・東京で本格サービスを開始し、現在では首都圏、関西圏、中京圏、福岡圏に57の営業拠点を展開、8万社にリフレッシュボックスを置き、その総台数は11万3000台という年商40億円を超えるビジネスに成長した、江崎グリコのオフィスグリコという「置き菓子」ビジネス。

(ちなみに「置き菓子」という言葉も江崎グリコの登録商標だそうです)

江崎グリコのオフィスグリコの販売戦略には、意外性と発想の転換にあふれていました。

今回のメルマガはオフィスグリコの話を取り上げてみたいと思います。

 

少子化への危機感から発足した江崎グリコの「消費者接点を多様化するプロ ジェクト」

「平成大不況」「失われた10年」と呼ばれ、菓子市場が縮小し続けていた1990年代は、日本の急速な少子化が進みつつある時代でもありました。

少子化による子どもの数の減少は、お菓子市場の縮小に直結します。

1997年、江崎グリコはその危機感から、今までの売り方では限界が来るとして新しいマーケット開拓のための「消費者接点を多様化するプロジェクト」を発足させました。

わかりやすく言えば、今までにない売り方で、今までにない利用客をつかもうと、

「商品をどう売るか」

ではなく

「お菓子に触れることのできる新しいシーンを生み出そう」

というプロジェクトです。

 

「どこでお菓子を食べるのか」意外だった市場調査の結果

そこで、小学生から60代後半まで、約800人の2週間の生活実態を調査し、どこで菓子と接点を持っているかを調べ上げたそうです。

その広範なマーケティングリサーチの結果は、実に意外なものでした。

1位の「家庭:70%」は予想通りでしたが、第2位は「オフィス:19%」だったのです。

「オフィスではお菓子は隠れて食べるもの」と思い込んでいたオフィスグリコのスタッフはこの結果に衝撃を受け、そして同時に、ここにビジネスチャンスがあると確信したそうです。

 

手口から明らかになったシステム上の3つの問題点

調査の結果、システムに以下の3つの問題点があったことがわかったそうです。

・定期的に見直されることのなかったアクセス制限

・機能しなかったアラート

・スマートフォンに対して無防備だった書き出し制御

それぞれを詳しく説明していきます。

 

「神聖な職場でお菓子なんて」を「リフレッシュ」に

こうして、オフィスグリコのプロジェクトが始まりました。
アンケート結果を掘り下げて調査した結果、オフィスでお菓子を食べている人は、やはり隠れて食べていることがわかりました。

出張や来客のお土産以外のお菓子は周囲の目を気にして食べづらいため、自分が持ち込んだお菓子は机の引き出しやバッグに隠していたのです。

調査を始めた1997年代は、社員のストレス解消のため、コーヒーやお茶を飲んだりお菓子を食べたりできるリフレッシュルームという空間が大手企業を中心に作られはじめていた時代でした。

そこで、お菓子はリフレッシュに役立つという面を強調すればいいと、

「リフレッシュのためのお菓子」

というコンセプトでやろうとしたそうです。

「職場でお菓子なんてけしからん」という風潮に、江崎グリコは「リフレッシュ」というキーワードで対抗したわけですね。

 

「訪問販売」から「農家の無人野菜売り場」へ

オフィスグリコは、最初は駅弁のようなスタイルだったそうです。大阪の第1ビルに入っている100社に飛び込み営業をかけ、60社から許可をもらったものの、販売に訪れて良いのは

「お昼かおやつの時間だけ」
「終業時間の5時半だけ」

といった具合に、仕事のジャマにならないための時間の制約がきつく、一週間ほどで挫折。

そこで、野菜と代金箱だけ置かれた、農村によくある無人野菜売り場をヒントに、代金を自主的に箱に入れる現在のようなリフレッシュボックスを考えだしたそうです。

60の会社にリフレッシュボックスと共に出向き、

「訪問販売は止めますから代わりにこれを置いてもらえませんか」
「いろいろな商品を詰めて、翌週入れ替えにうかがいます」
「代金はこの集金箱に入れてください」

と説明したそうです。

その結果、40社がリフレッシュボックスの設置に応じてくれたそうです。

 

オフィスグリコの代金の回収率は?

お金を入れなければ商品が出てこない自販機と違って、オフィスグリコのリフレッシュボックスは自由に開けることのできる引き出しになっています。

これ、回収率が気になりますよね。世の中、いい人ばかりじゃありません。
全員ちゃんとお金を払ってくれているのでしょうか。
お金を入れずに商品を持っていく人や、100円で2個以上もっていく人はいないのでしょうか。

農村の無人の野菜売り場の代金回収率は90%程度だそうですが、それは、治安もよく善良な人の多い田舎だからこそできる販売形態のようにも思えます。

ところが、リフレッシュボックスの設置に応じてくれた40社に翌週行くと、商品も売れている上に、代金の回収率がなんと100%。

この時点で行ける!という感触を掴んだそうです。
今でもオフィスグリコの代金回収率も95%程度だそうです。
代金回収率を上げるために、

「スタッフが商品を入れ替える姿を見せ、利用者と
コミュニケーションをとる」
「ボックスへの帰属意識を芽生えさせるために
20人程度で1台の利用にする」

などの措置をとっているそうです。

農家の人が一生懸命つくった野菜を盗むことに抵抗があるように、スタッフが商品を入れ替える姿をみせれば代金もちゃんと支払ってくれるだろう、というわけですね。

実際に、小銭がないからとわざわざ自販機で缶コーヒーを買って100円入れる人や、何度か100円を入れずにお菓子を持って行ったからと500円玉を入れる人までいるそうです。

ちなみに、オフィスグリコを見て、日本伝統の「富山の置き薬」を連想する人が多いそうですが、結果的に似たシステムになっただけで、オフィスグリコの発想の原点は、やはり農家の無人の野菜売り場だそうです。

 

オフィスグリコ、利用するのは女性?男性?

オフィスグリコがターゲットにしていたのはOL。
つまり女性でした。

ところが、いざフタを開けてみると、実に意外なことに利用者の7割が男性だったそうです。

若い独身の男性が朝食代わりに、30代以上の既婚の男性がストレス軽減や空腹のために、メタボや周囲の目も気にせずオフィスでお菓子を食べているようです。

男性は女性と違ってお菓子のためにわざわざ社外にでることもありませんから、そういった面でもオフィス内になるオフィスグリコはもってこいなのでしょうね。

女性にウケなかったというよりは、予想以上に男性にウケた、と見るべきでしょう。

オフィスグリコのために、今まで買わなかった男もお菓子を買うようになったのです。

新たな売り上げの創出ですね。

 

オフィスで売れてコンビニの売上もUP?

当初、オフィスグリコの利用者が増えれば、それだけ外での購入が減り、コンビニの売上を圧迫するのではないかと懸念されていたそうです。

が、結果は逆でした。
オフィスグリコを通してお菓子に触れることで、お菓子の種類や味を知った男性が、社外でもお菓子を買うようになったからだそうです。

 

鮮やかな赤ではなく地味なグレーをしている理由

リフレッシュボックスは、3段の引き出しがついた高さ40センチのB4サイズ。

さながら小さな文具整理箱のようです。それに色。
淡いブルーだったり、ベージュだったり、なんともパッとしない色をしています。
真っ赤なグリコのトレードマークとはかけ離れた地味な色です。

なぜあの真っ赤な色にしなかったのか。

これには理由があります。

男社会のオフィスでは、お菓子を食べるという行為は、さぼっていると受け取られてしまいがちなため、目立たないようにあえてそうしてあるからだそうです。

また、ボックスの大きさも、オフィスの規模によって変わることもなく、1種類のみ。

今以上の大きさになると、上司の目についてしまい、いい顔をされなくなるからだそうです。社員が多く、もっと大きい箱を持って来るようリクエストされた場合は、大きさではなく数を増やし、オフィス内にバラバラに置くそうです。

 

人が入れ替わらないなら、商品を入れ替えよう

リフレッシュボックスには、3つの棚にそれぞれ8個ずつ
計24個のお菓子が入っています。

1段目にはキャンディやガムのようなリフレッシュのためのお菓子、2段目には栄養補助食品、3段目には「ビスコ」などの小腹が空いた時のためのお菓子が入っています。

この棚の中身は、毎週訪問する販売員の手によって入れ替えられます。売れたものを補充するのではなく、
売れ残りがあっても入れ替えてしまうのです。

そうして、3週間で全部の商品が入れ替わるようになっています。

高速道路のサービスエリアのような、大勢の人間が行き交う場所にあるなら、お菓子の自販機は同じものばかりを入れていても売れます。
そこを訪れる人が毎日変わりますからね。

しかし、オフィスのような人の入れ替わりがすくない場所ではそうはいきません。

そこでオフィスグリコは、人が入れ替わらないなら
商品を入れ替えていこう、という発想の転換を行いました。

3週間で全部の商品が入れ替わるのは、そのためです。
これは意外性にも繋がり「今週は何が入っているのだろう?」
と利用者が毎週ボックスを開けるのが楽しくなり、
習慣化にもつながるそうです。

また、利用者のニーズに応えていくうち、他社の商品も
増えていったそうです。こうしたオフィスグリコの商品の
入れ替えシステムを「ローテーションシステム」と言い、
ビジネスモデル特許も取得しているそうです。

またこのシステムなら、年間200種類以上生まれる新しいお菓子の試食が100円でできるため、利用者に多くの商品を知ってもらうきっかけにもなります。

オフィスグリコではこれを「有料試食」と呼んでいるそうです。
リフレッシュボックスにはこうした側面もあるのですね。

 

オフィスグリコと「東日本大震災」

2011年の東日本大震災は、日本や企業に様々な影響を与えました。

震災の翌週、オフィスグリコの商品の入れ替えに行った際、

「オフィスグリコがあって良かった」

と利用者からお礼を言われたそうです。
お菓子が非常食として機能していたためです。

2013年4月、東京都では「東京都帰宅困難者対策条例」が施行されました。「3日分の飲料水・食料などの備蓄」を企業の努力義務とする条例です。

備蓄にはコストがかかりますが、オフィスグリコはコストがかかりません。

震災以降は、リフレッシュ用としてだけでなく、災害発生時の備蓄という意味も含まれるようになりました。

事実、オフィスグリコは、

「災害時や人道的支援が必要なときは、お金があるなしに関わらずご利用ください」

と案内しているそうです。

そういった理由で、帰宅困難者対策として、社内の規律が厳しい古いタイプの企業や官公庁でもオフィスグリコの受け入れがどんどん進んでいるそうです。

 

まとめ

市場と共に先細りしていく自社の運命を切り拓くために、グリコは「お菓子を食べるシーンはどこか」という点に着目することで、新しい市場を開拓することに成功しました。

生き残るために様々な発想の転換を行い、時には予想とは違った結果に驚かされる。

大変かもしれませんが、やはりビジネスの面白さややり甲斐は、こういった所にあると感じさせられました。

最後にちょっとグリコのお菓子の話を。

オフィスグリコの不動の売り上げ第1位は

『フレンドベーカリー チョコレートビスケット』。

第2位は『ビスコ』。
事業開始から10年にわたって不動のツートップだそうです。
「あれ?ポッキーは?」と思われるかもしれません。

人気のポッキーがないのが不思議ですよね。
ポッキーは、通常流通での売り上げは第1位なのですが、100円の商品がないため、オフィスグリコでは扱っていないから、だそうです。

へー、ですね。気付きが身近に多くあるものなんです。何事も。(∵`)

(記載 谷 美輝)

 

 

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