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継承者問題や経済事情から多様化するお墓事情の話

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『SEOマーケティングの未来を読む vol.177』
継承者問題や経済事情から多様化するお墓事情の話

【1】お盆には帰省するのが普通になって早や20年

大阪に来てから人生の半分以上になっていますが、
お盆と正月には実家の和歌山田辺市に帰省するのが普通になってます。

帰省して仏壇とお墓さんに行き、
お墓に刻まれた戒名を読み、お隣のお墓が新しくなっているのに
驚き、六地蔵さんも拝み、足元がいつのまにか整備されていたり
といろんな変化があるものです。

帰るたびに帰る方法が各駅だったのがくろしおから、高速バス、
レンタカー、カーシェアリングなどなど変化していますし、
1人で帰ってたのが2人になり、3人になり、4人になり、荷物が増え、
水着が増え、そして忘れ物も増える、こんなお盆が毎年になっています。

今回はそんなお盆に近い話。

「受け継ぎ、そしてまた、次世代に渡していく」

ことを理解すると、ものの見方も変わってきます。
これってなかなか経験しないとわからないんだろうな、と思う話です。



【2】 【まんが】商談打ち合わせの際のお作法

■ 【まんが】商談打ち合わせの際のお作法
  https://www.clarenet.co.jp/manga/300/

やってしまわないように、商談のお作法をまとめました。
新人への教育などにお使いください。

 

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継承者問題や経済事情から多様化するお墓事情の話

仏壇に手を合わせ、亡き人を偲んでお彼岸には墓参り。
先祖供養に欠かせない日本の美しい伝統行事です。

しかし昨今では、お墓参りする時間を作れない、経済的な事情から
お墓の維持が難しい、少子高齢化で墓の後継者がいなくなる、
遺族の負担にしたくない……

などの理由から、墓所を必要としない散骨を選ぶ人や、先祖代々の
墓石を撤去し遺骨を永代供養の合葬墓などに移し墓地返還をする
「墓じまい」する人も増えているようです。

そうした時代のニーズに合わせ、今ではお墓参りに関する様々な
サービスが登場しています。

AR(拡張現実)で墓参り、コインロッカーのような納骨堂、
故人の遺体の一部からダイヤモンドをつくり忘れ形見とするサービス、
などです。

今回のメルマガでは、多様化するライフスタイルや死生観に合わせた、
新しい供養のサービスを取り上げてみます。

 

減少する仏壇の数とお墓参りの回数

核家族化の進行や、戸建てよりも床面積が狭いマンション世帯の増加。
こうした事情から仏壇の保有率の低下が進んでいるそうです。

経済産業省の統計によると、仏壇などの宗教用具の市場規模は
この20年で半減しているそうです。

お墓やお墓参りに関しても同じようなものだそうです。

お墓の管理でもっとも問題となるのは継承者の問題で、管理していた
親族の高齢化や、就職で都市に移り住んだなどの理由で、
田舎のお墓の管理が難しくなるケースが多いそうです。

そのためお墓の引っ越しや墓じまいの相談なども増えているそうです。

また、葬送やお墓の形も多様化しているそうで、お墓を必要としない
散骨や、墓石の代わりに樹木を墓標とする樹木葬を望む人も増えて
いるのだとか。

後継者の問題だけでなく、価値観や死生観の多様化も影響しているのかもしれません。

 

AR(拡張現実)で故人に会えるスマホ墓参り『スマ墓』

AR(拡張現実)とスマートフォンを利用した風変わりな墓参りに関する
サービスがあるようです。

その名は『スマ墓』(スマボと呼ぶようです)。

このサービスを開始したのは墓石専門の石材店『良心石材』だそうです。

月額500円という遺族の負担にならない低価格で故人のお骨を預かり、
遺族が故人を偲びやすい、故人が大切にしていた身近な場所や公園、
観光地などを慰霊場所としてGPS情報を登録。

その場所に遺族が訪れると、スポットメッセージと呼ばれる
あらかじめ設定した写真や動画がスマートフォンに現れるというサービスです。

申込者が存命中の場合は、将来にわたり様々なメッセージを
残しておくことも可能だそうです。

 

生前に申し込むと死後1年目は無料の『スマ墓』

この『スマ墓』のサービスは、お墓を必要としない方、
お墓の在り方をしばらく考えたい方を対象にしているそうです。

預かったお骨は最大15年間保管し、15年を過ぎると合葬されます。

15年間いつでも返却可能なので、資金がたまったり、
場所が決まったりして、お墓がたてられるようになってから、
お骨を返却という利用も可能とのこと。

故人のお骨を預かるのに必要な額が月額500円と低価格なのですが、
遺族の負担を減らすための措置として、生前に申し込むと
死後1年目は無料になるそうです。

 

遺族に墓参りを負担にさせたくないという気持ちから生まれた『スマ墓』

生前にお墓を建てても、遺族が遠くに引越しした場合、お墓参りが
遺族の負担になってしまうのではないか。

こう考える人が多いため、生前に高価なお墓を買うことに疑問を
持つ人が多いそうです。

また、死生観から墓石自体を必要としない方や、経済的事情で墓石を
買うことのできない人も多いようです。

そうした顧客からの要望にこたえるためにはどうすればよいのか。
その答えが価格を抑えた最低限のお墓としてのスマ墓だったそうです。

「AR(拡張現実)で故人に会える!」という謳い文句からは、
墓参りもここまでハイテクになったのか!と思わされますが、
スマ墓が生まれた背景から考えると、ARはオマケで、

実質には価格を抑えた最低限のお墓を提供するためのサービス、
と考える方が正しいようです。

 

お墓もマンションの時代か

最近、注目を集めているのがマンションのような形式の納骨堂です。

一定の金額を払うことで、遺骨を納めた厨子や位牌、遺影などを
コインロッカーのようなスペースで管理してもらい、そこに親族や
関係者がお参りするというシステムになっています。

今までの墓地が戸建ならまさにこれはマンションのようですね。

メリットとしては、従来の墓地よりも安価、都心にありアクセスがいい、
野ざらしの墓石と違って屋内で管理されているため風雨による劣化や
損傷を防げる、お参りする際に雨や虫刺されなどを気にしなくてもいい、
などの点があげられます。

そのため、こうした納骨堂には年に1度どころか、毎月、毎週のように
お参りに訪れる人もいるそうです。

 

立体駐車場のシステムを援用した機械式納骨堂『白龍館 彩蓮」

最近では立体駐車場のシステムを援用したものまで登場しているようです。

名古屋市の万松寺は1万以上の厨子を管理できる機械式納骨堂
『白龍館 彩蓮』を地下1階にオープンしました。

ここでは業界初となる顔認証システムが導入されているそうです。

参拝者が1階受付でカメラに顔を認証させ、タッチパネルを操作すると
受付票が発行され、案内モニターによる誘導で指定の参拝スペースへ
行くと、

立体駐車場のようにバックヤードで保管されている故人の厨子が
参拝者の前までベルトコンベアーで運ばれて来て、
参拝スペースのモニターには戒名や遺影が映し出される……という仕組み。

この機械式納骨堂の開設には数億円単位のコストが発生しているため、
空きを作らないようにするためか、他宗派どころかキリスト教などの
他宗教の教徒の遺骨まで受け入れ可能にしているそうです。

こうした仕組みや姿勢から、機械式納骨堂に対し、利便性や利潤ばかり
を追求しすぎではないか、といった批判の声もあるようですが、
子や孫に負担をかけたくないと生前購入する人も多いそうです。

 

墓を不要と考える人たちに広まった散骨

散骨という葬送方法があります。
火葬した後の故人の遺骨を粉末状にし、海や空などに撒くというものです。

昔、映画化されたため「世界の中心で、愛をさけぶ」という
片山恭一の恋愛小説を知っている人も多いでしょう。

この作品のラストには、白血病で亡くなったヒロインの遺骨を、
彼女が憧れていたオーストラリアのエアーズロックで散骨するシーンが
でてきますので、この作品から散骨を知った人も多いでしょう。

粉末とはいえ死体のようなものなのですから、それを撒き散らす散骨は
法に触れるのではないのか?……
と疑問に持たれる方も多いのではないでしょうか。

そこで法的な話もしておきますと、この映画のずっと前の1991年に
「NPO法人葬送の自由をすすめる会」が神奈川県相模灘沖で散骨を
実施しており、

それに対し法務省や厚生省が
「節度をもって行なわれるのなら違法ではない」との見解を示しています。

そうした見解が示されたことで、費用や、寺との檀家関係のような
煩わしさから、墓を不要と考える人たちに散骨は急速に広まったそうです。

 

位牌を宇宙まで運ぶ『バルーン宇宙葬』

「バルーン宇宙葬」というものまであるそうです。

これは「バルーン宇宙葬の会」が行っているもので、ヘリウムガスに
よる巨大バルーンを使い、粉末状にした故人の遺灰を宇宙に撒く、
というものです。

まさしく「宇宙葬」ですね。

詳しく説明すると、天然ゴム製の直径2.5mのバルーンの中に遺骨を
入れて上空に飛ばし、約90分後に高度30~35kmの成層圏に達したあたり
で炸裂させるというもので、

遺骨は偏西風に乗って遥か彼方まで漂うことになるそうです。
料金は26万円だそうですが、すでに200件ほど実施されているそうです。
そしてやはり、利用するのは跡継ぎがいない人たちが多いのだとか。

 

遺骨をジュエリーにする『メモリアルダイヤモンド』

メモリアルダイヤモンドと呼ばれるものもあるようです。

これは人やペットの遺骨や遺灰、毛髪に含まれる炭素からダイヤモンド
を人工的に作り出し、故人の身体の一部を忘れ形見として
リングやネックレス、ピアスなどにするというもの。

人工的に作られたダイヤモンドとはいえ、輝きも硬度も、
天然ダイヤモンドと全く変わりないそうです。

ダイヤモンドのカラーはイエロー、ブルー、透明、レッド、グリーンの
5色から選ぶことができ、0.20~0.29カラットのイエローダイヤモンドで
あれば38万円ほどで、必要な遺骨の量は50~70グラム、毛髪で3グラム
程度だそうです。

日本国内では1500~2000人ほどに利用されているそうです。

 

故人の気持ちと遺族の気持ち

子や孫に負担をかけたくない、という気持ちから散骨を検討する人も
いるでしょうが、ここでちょっと興味深いアンケート結果があります。

全国石製品協同組合という墓石業界の団体がとったアンケートでは、
一般の墓地にお墓を建てた場合に比べ、散骨などにした場合の方が
後悔している遺族の割合が圧倒的に多かったそうです。

生前、故人が散骨を希望していたとても、手を合わせる場所、
家族の絆となりえる心の拠り所が遺族には無くなってしまうのですから、
それもそうなのかもしれません。

家族とよく相談して決めるのが良いと、専門家も言っているようです。

 

まとめ

経済事情や土地事情に合わせたこうした仏壇やお墓の多様化の根底には、
個人を偲ぶ気持ちや供養したいという気持ち、

子や孫に迷惑をかけたくないという気持ちが、
あるからではないでしょうか。
(自分には後継者もいないから散骨してくれ、という人もいるでしょうが……)

なんでもかんでも技術で利便化すればいいというものではないので
しょうが、地方には墓参りする遺族もなく、野ざらしになっている
お墓も多いと聞きますし。

お墓のあり方が多様化し選択肢が増えることは、
ビジネスとしてだけではなく、遺族にも良いことなのではないでしょうか。

ただ、お盆に実家に帰ったときに
仏壇やお墓がないというのは、成人になってしまった自分はまだいいとして、

「おじいちゃんのお父さん、ひいじいちゃんに
 『まんまんちゃん。あーとう』って言ってあげてね」

と子供に言えなくなるのはどうなんだろうか、は強くあります。

先祖に対しての敬意と言うか感謝があって、ようやく生きとし生けるものに感謝が
生まれるのではないか、というのがあるので。

決して強い信仰心から来るものではないので
わかんないですが。

(記載 谷 美輝)

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